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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? プロローグ「覗いてみタイッ!?」-1

 四月の終り、暖かい陽射しと若葉の芽吹く頃、島本紀夫は一人校舎の裏を掃除していた。
 本来ならもう四、五人いるはずなのだが、皆「ゴールデンウィークの打ち合わせがあるから」と言って、掃除を彼に押し付けていた。
 身長百五十七センチ、体重五十二キロ、黒縁眼鏡のおかっぱ頭。よく言えば取り付きやすく、悪く言えばつけ込まれやすい彼は、水球部と映研を人数合わせのために登録し、オマケにクラスの保健委員までしている彼は、一言でいうと断れない性格だった。
 掃除を押し付けられているのだが、当の紀夫はただ黙々と裏庭のゴミをかき集めていた。
 ティッシュにお菓子の袋、空き缶、紙パック……。
 人通りのない場所に何故? と思う彼の目の前に丸まったティッシュが落ちてきた。上を見上げると、丁度窓が締められる音がした。
 ――まったく、誰も見てないからって、ここはゴミ捨て場じゃないよ。
 とはいえ、相手の顔も見えないのでは言い返すことも出来ず、散らかされたゴミを拾うに他なかった。

 あらかた掃除し終えるとちりとりも一杯になる。
 校門の方を見ると、すでに帰宅している生徒達が見えた。おそらく明日からの連休に心弾ませているのだろう。そう思うと、ちりとりと箒片手に他人の尻拭いをする自分が惨めに思えた。
 かといって紀夫には明日からの予定がない。もうすぐ一七になる紀夫にとって、家族旅行を提案されても嬉しくなく、どちらかというと、たまの休みぐらい、他人からの干渉を避け、一人の時間を持ちたいと願っていた。
 体育館裏の焼却炉にゴミを捨てたら掃除はお終い。あとは担任の三枝に報告すれば、はれて自由の身……。
 しかし、プラスチェックのゴミ箱片手に焼却炉に行くと、周りにはゴミが散らかっていた。あとで文句をつけられても困るので、仕方なくゴミを拾い集める。
 ノートの切れ端にエンピツ、シャープペン、他にも携帯ストラップに化粧品。ガムの包みに口を結ばれたコンドーム……。
 ――え? なんでこんなモノ?
 彼女いない歴即ち年齢の彼だが、コンドームぐらいは知っている。ただ、使用済みの常態で見たのはこれが初めて。緑色の薄い膜に包まれた白い濁り汁。たまに自分でも処理するが、濃く臭ってきそうな他人のそれは、見ても不快でしかない。
 ただ、一方で何か意識する自分がいた。
 ――エッチ、してるのかな。皆、学校で……さ。
 一人の時間を持ちたいといっても人嫌いというわけでは無い紀夫は、人並みに性欲を持っているし、教室でたまに見える女子の生脚に心惹かれることもある。
 セックスしてみたい。
 その欲求も、当然持ち合わせていた。
 目を瞑ると体育館の裏手、人目につかない場所でカップルがイチャイチャしている様子が脳裏に浮かぶ。冗談交じりにキスをして、互いに胸元をさすりあい、身体を寄せ合い、そして……。
 ――いいな。
 素直にそう思っていた。おそらく、自分には縁の無い話。普段でも女子と話す機会などなく、たまにあっても「掃除お願い」「うん」「宿題見せて」「いいよ」程度でしかない。
 ただ、負け惜しみに近いが、クラスの女子に好きな子はいない。
 誰かと恋仲になって、身体をまじあわせることなど、段階と次元の都合上、遠かった。
 ――さあさ、掃除終わらせよう。早く帰ろっと。
 ゴムを手に取るのはさすがに嫌なので、木の枝をお箸のように使い、焼却炉に放り込む。他のゴミも一緒に入れておけば、用務員が処理をしてくれる。だからこれで終り。

 ……のはずだった。

「……んぁ……やぁ、ダメ……」

 かすかに聞こえたのは、くぐもった女子の声。
 どこからだろう? 体育館の裏手にある倉庫のほうからだ。
 でもなんで? それは緑の膜が暗に物語っている。

 つまり、現在進行形で……。


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