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妄想罪
【その他 官能小説】

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妄想罪-1

星雲暦4998年、文明は巨大エネルギーとロボットによる労働力を獲得し、通貨は廃止され、働く必要が無い社会を実現していた。しかし、社会構造の変化は、自殺、暴力、愉快犯、性犯罪とあらゆる犯罪を爆発的に増加させていた。そして犯罪の増加は女性には起こらず、男性に集中していることが分かっていた。

星雲暦5001年、社会構造の変革を訴え、圧倒的支持を獲得した女尊男卑主義の急先鋒、マザーテレサが星間大統領に就任した。テレサは就任後直ちに、健全な社会作りを念頭に大統領令を発令した。その中に謙虚ならざる罪として、二つの刑事罰が入っていた。それが「犯罪予備罪」と「妄想罪」であった。

ロボット警官は脳波の微細な信号を受信し考えていることを分析する能力を持っている。これを利用し、暴力的なものや猟奇的なものを頭に浮かべていると犯罪予備罪として、性的な描写を思い浮かべると妄想罪として検挙すると言うものだった。



タロはうだつの上がらないサラリーマン生活から開放され、正に人生を謳歌していた。
タロは何よりもボーっとして過ごすことが大好きだった。街角のベンチで通り過ぎる美女達を眺めて毎日のように妄想に耽っていた。

タロの妄想はいつも決まっていた。

通り掛かりの美女がタロを見つける。

「あらー!タロちゃん。かわいい!
 こちょこちょしてあげるー!」

「ぼくもこちょこちょしたーい!」

「あはん。こちょこちょいっぱいしてー!」

「こちょこちょ、ちまちゅよー!」

「あはん。うふん。タロちゃん、気持ちいいー!」

といった具合だった。

失業?してから、サラリーマン時代に買えなかったメイド型ロボットを手に入れた。
ロボットはとても良くしてくれたが、タロにとって長年親しんだ街角妄想は癒しそのものだった。

「妄想罪」のニュースを見たときは飛び上がらんばかりに驚いた。一日中妄想に耽っているタロにとって有罪確実な犯罪であった。

一日中、食べ物を思い浮かべ、美味しいものを食べ歩いてみた。メイドロボットを相手にいやになるくらい吐き出すものを吐き出してみた。それでも街角に出ると美女が気になり妄想が始まってしまう。目を瞑っても妄想は止まらなかった。

タロは病院に通い始めた。妄想抑制教室にも通った。薬を飲みカウンセリングを受けても妄想が治まることは無かった。それでも意識して、何も考えずに歩くことはでき
るようになっていた。最初は赤信号を渡ったり階段を転げ落ちたりと大変だったが、少しずつ生活できるようになっていた。

そしてタロは考えた。何も考えずに街中を歩きビデオカメラで街の風景を撮影したのだ。そのビデオを自宅で再生すると、同じように妄想に耽ることができるのだ。



「犯罪予備罪」「妄想罪」が施行されるとメディアは連日そのことを報道していた。
タロは妄想抑制教室を卒業し、安心だと思っていた。その時、思わぬ映像が眼に入った。

小さなお尻を包むショートパンツがアップになった。小麦色のすらりとした脚が長く伸びている。スリムな美女は長いストレートヘアを揺らしてあるいていた。振り返った女性はハットするほど美しかった。その女性は妄想犯検挙用おとり捜査ロボットだった。


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