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HAPPY HELLOWEEN 〜ハッピー・エロウィン〜
【学園物 官能小説】

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第6話『ハロウィン余興、スナップ・ドラゴン』-1

HAPPY HELLOWEEN 〜 ハッピー・エロウィン 〜


 金盥が片付けられたので、便臭は随分薄まった。

『これより第二種目、『スナップ・ドラゴン』の用意をお願いします』
 
 放送が流れ、Bグループ生が『皿がのった小机』を並べた。 お皿には干し葡萄が山盛りになっている。  Bグループ生は机に登り、スカートをたくして腰を屈めた。 直後、ショロロロ、股座から黄ばんだ液体を滴らせる。 

(オシッコ……にしては、やけに薫りがいいような……)

 黄色、というよりも琥珀色な液体だ。 無軌道にしぶくと思いきや、ねっとりと干し葡萄に濡れ絡まる。

(この薫りは確か……えーと……)

 記憶の引き出しを漁っていると、放送が正解を教えてくれた。

『本種目『スナップ・ドラゴン』は今年からの開催になりますので、競技の概略を説明いたします。 ただいま用意した干し葡萄にブランデーをかけました。 これから点火しますが、ブランデーが揮発しきるまでが競技時間です。 競技参加者は直接口で干し葡萄を食べ、制限時間内に食べた数を競います。 干し葡萄は銘柄ありの逸品ですので、味については保証します。 みなさん火傷に気をつけて、思う存分味わってください』

 なるほど、言われてみればブランデー、それもかなり上等の樽臭だ。

 『スナップ・ドラゴン(爆ぜる龍)』――ハロウィンゆかりのゲームの1つで、主に旧世紀北欧で催された。 ブランデーに代表される、アルコール度数が高い蒸留酒を干し葡萄にかけて火をつける。 室内の灯りをけせば、干し葡萄の山だけが煌々と燃える。 そうやって燃える干し葡萄を直接手で摘まみ、握り込んで火を消してから口に放り込むのが、オーソドックスな『スナップ・ドラゴン』だ。 火が消えるまでにいくつ食べられるかを競ったらしい。

 『スナップ・ドラゴン』。

 『アップル・ダック(アヒルのリンゴ)』同様、由来は旧世紀の魔女裁判に遡る。 教会が清めた聖火は魔女に殊更の火傷を負わせると信じられていて。 魔女の嫌疑をかけられた女性は、聖火の中に、自発的に両手を差し入れるよう強制された。 火の恐怖に敗けて自ら手をいれることを拒めば、それは即ち、自分が魔女と認めたことになる。 火に炙る時間が短すぎても、やはり魔女と見做される。 一方心を鬼にして火に手を突っ込んだとして、火傷をすれば、これもまた魔女の証拠になる。

 ……魔女の嫌疑を晴らすには、一瞬だけ腕を差し込み、火傷をする直前まで腕をあぶってから引き抜かねばならない。 『スナップ・ドラゴン』は、必死で魔女の嫌疑と闘う憐れな女性の姿を『燃える干し葡萄を掴む』ことに托した、大人の火遊びといえるだろう。




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