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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♠性悪女♠-1

「ごめんなさい」


勢いに任せ過ぎた感は、自分でもわかっていた。


だから、目の前の彼女が頭を下げるのも仕方ないとわかっていた。


でも、振られるのはそれなりに痛手で。


ならば、せめてこのままそっとして欲しかったんだ。


なのに、目の前の想い人は、俺の交際の申し込みをただ断るだけではなく、


「あたし、天野くんみたいなクサそうなタイプって、生理的に受け付けないの」


と、ニッコリ微笑んで、さらにダメージを与えてきやがったのだ。







「ク、クサそう……?」


一瞬頭が真っ白になって、言われた言葉をおうむ返ししていると、彼女は笑顔のまま頷く。


ああ、この笑顔は、やっぱり天使だ……。なんて余韻に浸る暇も無く、


「そ、天野くんっていつもスポーツばかりしてて、汗クサそうでしょう? それに、身体もいかつくて怖いし。あたし、そういうの無理なのよ」


彼女はその可憐な小さな唇を動かし、俺への暴言を次々と吐いていく。


しかもあの極上スマイルを崩さないまま。


そしていかに俺が生理的に受け付けないかを熱弁した彼女は、一度だけ掛時計をちらりと見てから、


「そういうわけだから、じゃああたしバイトに戻るね」


と、ヒラヒラ手を振りながら、休憩終了のタイムカードを切って、スタッフルームのドアを開け、フロアに戻っていった。


狭いスタッフルームに取り残された俺は、ようやく我に返ったようにまばたきを何度もしながら、彼女が出て行ったあとのドアを見つめていた。


振られたのは、別に構わない。当たって砕ける覚悟だったから。


でも、あの女、次に何て言いやがった?


「クサそう」なんて、かなり傷つく言葉。


確かに俺は、ガキの頃から続けていたバレーを、大学生になった今でも頑張って続けている。


それだけじゃなく、昔からスポーツバカと呼ばれるくらい、運動ばかりやってて、勉強やその他がおろそかになってるのも自覚している。


でも、クサそうなんて、スポーツに打ち込んでる人に向かっていう言葉か!?


湧き上がってくる怒りで身体が勝手に震えてくる。


ソレを抑えるため、必死で髪の毛を掻きむしった。


「ふざけんな! 俺は毎日風呂にちゃんと入ってるし、部活が終わったらすぐシャワー浴びてるし、不潔にしてるつもりなんてねーぞ!!」


ボルテージが上がった俺は、地団駄踏みながら一人で吠えた。


一世一代の告白だったのに!


一目惚れから始まったこの恋、アイツは俺の運命の相手だとまで思っていたのに!!


それが、あんな性格の悪いクソ女だったとは!!!


「ぜってー許さねえぞ、松本里穂!!」


愛は、憎しみに変わると言う。


まさにその言葉の通り、俺は、ついさっき告白した松本里穂への憎悪をたぎらせていた。



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