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淫習の村〜触手に捧げられる花嫁〜
【ホラー 官能小説】

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主の花嫁-1

 大勢の村人たちを置いたまま、数人の男たちと村長は屋敷の裏手にわたしを連れて行った。わずかに触れられているだけの背中や腰のあたりにさえ、体の疼きが反応してしまう。唇を噛んで声を殺しながら耐える。

 ギイ、と音を立てて、村長がどこかの扉を開けた。古いお寺のような……どこか懐かしい匂いが漂う。真っ暗な扉の中を奥へと進む。何も見えない空間に、男たちの足音と呼吸する音だけが反響する。先へ進むにつれて、暗闇はその濃度を増していくようだった。

 途中でいくつもの階段を降り、わたしたちはどんどん地下へと潜っていった。いったい幾つ目の階段を降りたときだろうか。男たちの足がぴたりと止まった。

「ご苦労だったね。いよいよ主と対面するときが来ましたよ。さあ、その体を開いて、すべてを主におまかせするのですよ……」

 村長の声はこれまで以上に優しく、それが逆に恐ろしく感じられた。正面には壁いっぱいの幅にはまった鉄格子。村長が手元の明かりをかざし、大きな鍵を取り出してガチャガチャと錠前を外した。鉄格子の一部がカタンと外れ、その隙間からわたしは暗闇の奥へと放り込まれた。すぐにまた外れた部分は嵌め直され、わたしひとりが鉄格子の中に取り残された。

 村長と男たちは、鍵がしっかりと掛っているのを確認すると、まるで恐ろしいものから逃げるように一目散に走り去ってしまった。ここから出して、と言う間さえ無かった。

「もう……どうしたらいいの……」

 大好きな恭介と結婚できることに浮かれ過ぎていた。でもまさか、こんな目に遭わされるなんて想像もできなかった。助けて……誰にともなく呟いたとき、暗闇の奥で物音が聞こえた。

 ずるずる。ずるずる。何かが床を這いまわっている。……蛇? 足先に何かが触れた。ひんやりと冷たい、ゼリー状の何かが。

「いやっ!」

 壁に沿って逃げようとしても、壁そのものが古くなっているのか触れるとぽろぽろと崩れてきて何とも心もとない。この狭い空間の中では、そもそも逃げる場所なんてない。少しずつ暗闇に目が慣れてきて、地面を這うものの正体が見えてきた。それはぶよぶよとしたものでできた、蛇のような、ミミズのような触手の塊。根をひとつに持つ何百もの触手たちが好き勝手に壁や床をずるずると這いまわっている。


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