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卒業式の前に
【青春 恋愛小説】

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卒業式の前に-1

 もうすぐ卒業式の日がやってくる。

 慣れ親しんだいろいろなものと、サヨナラする季節。

 4年間過ごした大学を卒業することよりも、社会に出ることの不安よりも、友達と離れることよりも。ほかのどんなことよりも、ずっとずっと心にかかることがある。

 中学生の時に初めて同じクラスになって、高校も同じで、偶然にも大学まで同じところに通っていたヒロキ。家が近くて、なんとなく一緒に帰ったりすることが多くて、でも、あの、つきあってるとかそういうんじゃなくて、そう、絶対そういうんじゃなくて、

 ・・・うまく言えないな。

 学校からの帰り道におしゃべりしたり、ちょっとお腹が空いたからってファストフードのお店に寄り道したり、テキストの貸し借りをしたり、友達と喧嘩したときには慰めてもらったり、お互いに勉強や就職活動の悩みなんかを愚痴ったり。

そういう時間はわたしにとってものすごく大切で、楽しくて、でも卒業しちゃったらもうそういう時間を持てないんだろうなあって思ったら、自分の中に大きな穴があいたようなものすごく寂しい気持ちになる。

気がつけばため息ばかりついている。


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